吉本ばななの本、悲しい予感

吉本ばななの本-悲しい予感

 古本屋へ行くことがとても好きだ。理由は簡単だ。お金がないために、新書を買う気はないし、かといって、本を読まないのは退屈だし、それに作家としてのプライドが傷つく。だから、私はよく古本屋に行く。

 古本屋だからといって、悪い本ばかりが並んでいるわけではない。むしろ、いい本が並んでいることの方が多いとさえ、私は思っている。特に、特価の本棚はベストセラーとして、一時期一世風靡した作品が並んでいる。その中で最近買った作品が、今回のタイトルにもなっている吉本ばななさんの作品だった。

 私が買ったのは、『悲しい予感』という作品だ。その作品は現実的な話のようで、非現実的で、風呂にあるはずのないアヒルのおもちゃが浮かんでいるのを、主人公がまざまざと見てしまう場面などが随所にある。おもわず、私は吉本ばななさんがホラー作家ではないかと思ったぐらいだ。だが、その作品の趣旨はホラーにあるのではなく、主人公の悲しい思い出にまつわる話である。最後の方などは、あまりに私が主人公に感情移入するため、電車の中だというのに、涙をこぼしてしまったほどだ。

 それからというもの、彼女の作品を読むことが好きになり、私は古本屋の特価棚にある限り読み進めた。友達からも借りてきて、読み始めた。その結果、彼女の作品全体についての何かがつかめたような気がした。

 彼女の作品は、基本的に品がよい。人を殺すとか、ものを盗むとか、道徳的な罪を犯すことがいっさいない。また、性的描写もない。まるで、文学高校生が書く、純愛小説もどきのようなだ。だが、それがまたさっぱりとしていて、私は好きだ。

 けれども、彼女の作品で、私が一番好きなところは主人公が前向きなところだ。主人公はいつも明るくって、朗らか。悲しいことが身の回りに起きても、主人公自身はその悲しいことにあまり流されない。本を読んでいて、そんな主人公の強さにどんどん引き寄せられていくのだ。面白いと漠然とは言えない。主人公の生き様を、主人公がこの後どうなっていくのかが、ものすごく気になってしまうのだ。

 また、彼女の作品には、主人公に必ず近い人の死がまとわりつく。『キッチン』では、主人公の祖母が死んでしまうし、『キッチン2』では、『キッチン』での恋人の母親が死んでしまう。それでも、主人公は死の悲しみを巧みに乗り越えて、前向きに生きていく。その姿は本当に感動ものだ。

 総じて、彼女の作品は読んでいて気持ちがいい。私も人様にそう思われる物書きになりたいものだ。と思いつつ、半ばは、無理かなっと、首を傾げる毎日を送っている。