高校生に読んでほしい小説-山本周五郎の傑作「さぶ」

エッセイ

山本周五郎の傑作時代小説「さぶ」

山本周五郎の作品は面白い。いつの年代で読んでも、いろいろと考えさせられる。そしてヒューマンドラマなので、時代を感じさせない。このシチュエーション、この人間関係、あるある!といった「あるある」感がそこには存在する。

時代小説「さぶ」のあらすじ

江戸の下町で、何でも器用にできるが、そのために他人から反感を買う栄二と、頭が弱い上に、不器用なさぶ。この二人の職人の友情を描いた小説です。
さらに、ここに「おのぶ」という女性が登場して、三角関係が発生します。さぶはおのぶのことが好き。けれど、おのぶはさぶを異性としては見れない。友情になってしまっているんですよね。そして、実は栄二のことが好き。だけど、栄二は、別の女性、おすえが好き。複雑な恋愛模様・・・というか、よくあるドラマに出てくるラブストーリーです。東京ラブストーリーも、こんなかんじでしたよね。性別は逆転していましたが。

この作品は書き方が実にうまい。主人公の栄二郎の生き様を描くことで、そばにいても、栄二郎とは対照的な”さぶ”の生き方を浮き彫りにしている。それゆえ、”さぶ”を事実上の主人公にしてしまっている。これぞ、まさに技だろう。文章の技だ。

山本周五郎って、どんな小説家?

山本周五郎は、明治から昭和に生きた小説家で、山本周五郎賞という文芸賞ができたほどの名作家です。本名は清水三十六(しみず さとむ)というお名前で、こちらも数字の入ったお名前なんです。山梨県出身。代表作は「赤ひげ診療譚」、「五瓣の椿」、「季節のない街」、そして、ご紹介している「さぶ」。あ、伊達騒動を元に書いた「樅ノ木は残った」も名作ですね。これは約5年も書き続けた長編歴史小説です。また、由井正雪を主人公とした「正雪記」も面白かったです。歴史好きにはたまらないですね。結構あまのじゃくだったようで、直木賞史上唯一の授賞決定後の辞退者です。反骨精神すごいですね。

ほかにも山本周五郎の作品はすごい!「雨あがる」

「雨あがる」、「どら平太」と、山本周五郎原作の映画は数多く上映されていて、そのほとんどが大ヒットしている。「雨あがる」にいたっては、これはウケないと思わせるヒューマン時代劇だったが、興行収入7.5億円と好調でした。主演は、寺尾聰。ヒロインに宮崎美子とシブいかんじでしたね。ちなみに、吉岡秀隆も脇役で登場していました。このころは初々しいです。仲代達矢さんも出演していて、存在感が大きかったのを覚えています。2000年の公開映画で、第24回日本アカデミー賞を受賞した作品です。脚本は黒澤明監督でした。最優秀脚本賞も受賞しましたね。ヴェネチア国際映画賞でも、賞を取りましたね。

有名日本映画監督が撮りたかった「どら平太」

「どら平太」も2000年に公開された映画で、監督は、市川崑さん。興行収入14億円と、こちらもスマッシュヒットでしたね。主演は、役所広司、ヒロインは浅野ゆう子。キャストは、他に、宇崎竜童、片岡鶴太郎、菅原文太と名俳優、ベテラン俳優が名を連ねています。痛快時代劇大作みたいな脚本の映画だったので、わかりやすかったのもあると思います。今見ても、この作品は気楽に見られる。2時間の安定した時代劇です。ちなみに脚本は、四騎の会
(黒澤明、木下惠介、市川崑、小林正樹)によって作られたものを、市川監督が直したものです。もともとは、1960年代に企画していたらしく、それを2000年に公開したというのは、なみなみならぬ魂の入れようですよね。これだけの名監督が作りたかった作品ですよ、どら平太。

山本周五郎という小説家。この夏、いくつか読書してみてはいかがでしょうか?