未来系青春小説「ブレイブ ピープル」1

はじめに

今回は中編の作品です。少し重いかんじの作品です。テーマは”疲れの普遍、自然化”です。疲れという人間の当たり前にある圧力を、どう抱えて生きていくかを考えながら記しました。あらすじとしては、未来への不安、若さゆえの闘いを描く小説です。主人公のキャラクター設定、人間性には、こだわって作った小説です。読む人によっては、その面白さが伝わってくると思いますが、賛否両論でした。

未来系青春小説「ブレイブ ピープル」1

疲れは誰にでもある。人はそれぞれ色々なものに疲れを見る。けれど、誰も疲れの中心をしっかりと見ない。なぜだろうか? 疲れの中身ばかりを凝視していては、凝視することだけで疲れてしまう。そのため、何が疲れの原因なのかわからなくなるから見ようとはしないのかもしれない。だが、その疲れを抱いたまま生活することは悪いことじゃない。悪いのは山のようにある疲れに埋もれてしまうことだ。くすんだ疲れに、その身までもくすませずに、疲れも自然と思って活きるべき。疲れるのが自然なんだから。例え、苦しくても…

僕は西日暮里の駅前で、鹿島先輩を待っていた。雲のない空を見上げては、すぐに腕時計をのぞき込む。鹿島先輩の遅刻癖には慣れっこだったとはいえ、さすがに15分は待ちくたびれる。約束した時間が、二時半。それなのにいっこうに姿を現す気配がない。イヤホンから流れるメロディーがCD一枚分流れ終わったらしく、CDプレイヤーはリピートを始めていた。

薄い灰色のジャケットを着た鹿島先輩が、人を流し続ける改札から出てきた。遅刻を悪びれる様子もなく、鹿島先輩は笑いながら僕を見つけた。指で僕をさしながら、僕に一歩一歩近づいてくる。

「よーす。おお、さすがに今日はちゃんとした格好して来いって言っておいたからな。ちゃんとしてるじゃないか」

僕はムスッとした。日頃の服装センスの悪さは自覚しているつもりだが、かといって、鹿島先輩には言われたくなかった。柔道着をジャケットの代わりだとか言って羽織っているような鹿島先輩よりはずっとセンスはよいだろう。

「先輩。先輩よりは、僕の方が日頃からずっとセンスありますから」

「なるほど。俺よりもずっとセンスがあると? ふ-む。でも、一つだけ、俺は言いたい。蝶ネクタイしてくるのは止めろ。普通のネクタイをしろって言うんだ。色や柄は趣味が悪くてもいいけどなあ。蝶ネクタイは次元が違う。いいか、これからは正装と言ったら、必ず、普通のネクタイだかんな」

僕はコクリと肯いた。先輩の目がマジだった。先輩を知らない人からはマジな目の先輩を見れば、先輩の目は怒りに満ちている目に映る。子供が見たら声を上げて泣き出してしまうだろう。

西日暮里から、都営バスに乗り、僕らはいくつもの駅を越えた。そして、槍高台というバス停で、先輩が降車のブザーを鳴らした。バス中をピンポンという二段音が響く。僕らはバスステップから灰色のアスファルトの上に足をおろした。アスファルトは、ゴムでできているバスのステップよりもずっと固い。

バス停から、五分ぐらい歩いて、僕らは緑色に包まれたビルの前に立ち止まった。僕はビルを見上げながら、先輩に言った。

「先輩。ここですか、先輩の紹介してくれる会社って?」

「ああ、俺の古い友人が勤めている広告代理会社なんだ。ここなら、新規募集をかなりの人数でやっているからな。さすがのお前でも採ってもらえるだろう」

「はい。先輩、期待に応えます」

そうなのだ。僕は就職浪人をしている身なのだ。しかも、2年間も就職先が決まらない。今年だけで、もうすでに12社の面接に行っている。しかし、どれもダメだった。

不況、不況と騒いでいる世間のせいだとみんなは慰めてくれる。だが、僕には僕を採ってもらえないわけがわかっていた。僕には、若者の特典のような覇気がないのだ。どこへ行っても、僕にはやりたい仕事がないからだ。だからといって、やる気のあるような素振りを見せられるほど、僕は器用ではない。だから、他のフレッシュマンと違って、若者らしい覇気が見られない。そのおかげで、僕はほとんど内定をもらったことがなかった。もらっても補欠がいいところ。だが、補欠といっても、後で会社側から連絡が来た試しがない。おそらく、補欠の補欠といったところなのだろう。

しかし、今年はさすがに就職しなければいけないと決心した。経済的にも限度があるし、僕の中では、今年の内に職に就かなかったら、永遠に定職に就かないような気がしていたからだ。何の夢もなくフリーターをやっていく。僕の中で、それは罪だった。ここまで育ててくれた家族や先生達に悪い。僕はどうしても就職しなければならないのだ。今日こそはどうにか自分を作って、覇気のあるところを会社に見せつけてやろうと思っていた。