将来は何?青春小説「ブレイブ ピープル」18

将来は何?青春小説「ブレイブ ピープル」18

美紀の声は素っ気ない声だった。別にそれが悪いわけではない。けど、何となく。僕は何となく淋しかった。

「ええ」

「おいおい。なんだよ。永遠の別れみたいに。永遠の別れじゃねーだろうが。ま、俺と美紀は永遠の別れだけどな」

トシは何にでも首を突っ込んでくる。それは会話の雰囲気を跡形もなく壊す。それだけではなく、会話の軸を全て自分の方に持ってくる。もっとも、昨日、美紀が教えてくれた、僕と共通に持っている”孤独”という悲しさがそうさせるのだろう。自分が注目を浴びて、誰かにかまってもらうことによって、自分は一人ではないんだという思いに浸りたいのだろう。そう思うと、僕はトシのそれに親近感を覚えた。

「はいはい。じゃあ、またね、太閤さん」

僕は自分の部屋に帰った。がらんとしていて、何も変わっていない。二日前の夜に飛び出して以来だ。懐かしいというほどではないが、自分の巣に帰ってきた感じがする。そして、今の僕には、なんとなくこの部屋が汚く見えた。あんなに掃除をしたはずの部屋なのに。輝いているようには思えなかった。とりあえず、僕はシャワーを浴びた。そして、シャワーを浴びながら、もう一回掃除をしようと思った。

翌日の昼頃、僕は美紀の部屋を訪れた。土曜だったから、美紀もトシもいるのではないかと思ったのだ。

「もしもし、美紀さんいますか? 太閤です」

僕は、どうぞ入ってという声に導かれ、美紀の部屋に上がり込む。

「散らかっているけど、どうぞ。って、今更かな。ねえ、コーヒーと紅茶、それとウィスキー。どれがいい?」

美紀はキッチンに立ちながら、鼻歌混じりにそう言った。

「うーん、じゃあ。コーヒーをお願いします」

「はーい。ねえ。ところでさあ、トシ、どこ行ったか知らない?」

「ええ、知りませんが。どこかへ出かけたんですか?」

「そうなの。何か昨日からずっと帰ってこないの。てっきり、あなたの家に行ったのかと思っていたんだけど」

美紀の困惑した声が耳にはいる。僕は美紀はやっぱりトシのことを…と思いつつも、素知らぬ顔で話を進める。

「いえ、うちには。高杉さんのところじゃないですか? 何か、会社がどうのこうのって言っていたから」

「ねえ、会社って、どういうことなのかなあ。まさか…」

美紀の言葉を遮るように、電話が鳴った。

「もしもし。ん。トシ? 何してるの?」

トシからの電話か。僕は美紀が置いていったコーヒーに口をつける。少し熱い。

「わかった。すぐ行く」

美紀は電話を切り、放心状態に陥っている。電話を持っている手をブランとさせて、ぺたんと座り込んだ。

「どうしたんですか?」

「トシがね、会社の創立パーティーやるからって。すぐ来いって」

僕は唖然とした。あの、ぐうたらで酔っぱらいのトシが会社を作った。いきなりだったからか、それとも、意外だったからか。僕もポワンとしてしまった。

「とにかく、美紀さん、行きましょうよ」

美紀は焦点の合わない目を宙に浮かせたままだ。


PAGE TOP