恋愛小説「愛はその時生きて・・・」1

恋愛小説「愛はその時生きて・・・」

恋愛小説としての「愛はその時生きて・・・」とは

この時期から、セリフ、への意識が高まっていて、それを表現しようとしていました。なので、主人公とヒロインの台詞に注目して読んで欲しい作品。特に最後の場面での台詞は、この小説に流れる嫌なムードをきっと払拭してくれるはず。逆転劇!?

公開当時の評価は、賛否両論でした。セリフにこだわりすぎたかと、、、舞台とかの脚本とか書きたくなっていたのもあります。

テーマは”愛の永遠性”。こういうテーマを選んでいる時点で、当時のワンスペースで表現するというものから、書きたいものを書くというスタンスに変わっているのがわかります。小説を書くことでの変換期だったのだと思います。

恋愛小説「愛はその時生きて・・・」1

 何をしたいのかわからなくなるほど、憂鬱な午後だった。灰色の雲がどんよりと空を覆い尽くしていて、一条の光も地面を照らすことを許していない。そんな日だからか、それとも僕が一人でいたくなかったのか。そのどちらだか自分でもわからないが、僕は木津を呼び出して、蒲田のドトールでコーヒーを飲んでいた。
僕の前で静かに座っている木津が、夜色のコーヒーをすする。そんな様子を見ながら、僕は長いあくびをした。あくびをしたのは退屈だからではない。僕にはわかっていた。それが、流れてくる涙を隠すためのものであることを。あくびで流れた涙だと、僕は木津の前でごまかしたかったのだ。
「ねえ、今日はどこ行くの?」
コーヒーカップをクリーム色の皿の上に置いて、木津は僕をのぞき込んできた。
「ああ、どこいこっか?」
どこかへ行くとしても、僕にはそのどこかが決められない。僕には判断力というものがないのだ。こういうことは、いつも謙がしていたからだ。しかし、どこかに行かなければいけないような気がした。いつになく、木津の顔が淋しげに見えたからだ。ドトールの狭い空間で、そんな木津の顔を直視することは、僕にとって胸を締め付けられるような思いだった。二人でいてもつらい。
「うーん、どこ行こうかねー」
「また、後先考えずに呼び出したんだ」
え、まあね。カップにまとわりついたコーヒーのシミを見ながら、僕は木津と視線を合わすことを避けた。今の僕に、先のことを考えろと注文されても無理なことだ。
「んじゃあ、今日は新宿にイコ。新宿でさあ、今さあ、中国物産展やってるんだよね。面白そうじゃない?」
「よし。んじゃあ、そこ行こうよ」
待っていましたといわんばかりに、僕は席を立った。

新宿の雑踏。平日の昼間なのに、何でこんなにも人がいるのだろう。しかも、通り過ぎる人、みんながあわただしい。なんだか、こっちまであわただしい気分になりそうだ。けれど、周りの人のように焦って先に行くには、僕らは目的地があんまりにも近すぎた。僕らの目的地は京王デパートの十階。中国物産展だ。エレベーターを登れば、すぐに着いてしまう。そんなところに焦っていく必要なんて、これっぽっちもない。
「私、なんか買おうかな。古西君も何か買ったら?」
「ああ、そうだねえ。何かいいものあったら、買おうかな」
木津のテンションは相変わらずだ。特別低いというわけでもないが、無理に元気を出しているように見える。そんなに無理しなくてもいいのに。そう思っている僕を後目に、木津はずんずんと歩みを展示場の中に進めていく。僕には、木津を見失わないように追いかけるので精一杯だ。
木津は豚マン売場のところで急に止まった。そして、後ろにいるであろう僕に向かって、にこっと笑った。
「ねえ。お腹空いたら、これ買ってさあ、新宿中央公園で食べよ。外で食べるのって、美味しすぎるよね」
うん、うん。木津は元気ぶっているようだ。