青春系ネット小説「怖くて飛べない!」

前回投稿した「ブレイブピープル」と同じくらいの中編小説です。見えない世界に踏み込む勇気を描いた小説です。「ブレイブピープル」の姉妹作品です。

あらすじは、「ブレイブピープル」の最後に出てきた安藤という男のお話です。なぜ、彼が土方と組んで仕事をすることになったのか? 恋を交えて、安藤の人間的成長を描いていきます。

今回のテーマは”未来がわからないのだから、今を精いっぱい生きよう”というフレーズを中心に、「不安に打ち勝つ」気持ちを書いてみました。

青春系ネット小説「怖くて飛べない!」1

しゃがみ始めた夕日の中を走った。五時の鐘が鳴り終わるまでには、目の前の教会に着かなければならない。そうしないと、僕は町田と恵理香の結婚式に間に合わなくなってしまう。恵理香が結婚をする前に、どうしても、恵理香と話がしたい。

恵理香と話して、どうこうなるわけではない。それはわかっていた。今頃、恵理香は聖なる教会で純白のドレスに身を包んでいる頃だ。けれど、僕は走っていた。何のために走っているのだろう。なぜ、走っているのだろう。わかるわけがない。現実のこの世界で、未来なんて誰にもわからないのだから。

目の前の信号が変わった。青だ。

僕と恵理香は中学生の頃に出会った。僕らは本当に仲が良かった。帰り道が同じせいもあったろう。だが修学旅行の斑も一緒になったし、受験する高校も一緒になった。まるで、僕らが前世から結婚を約束されている仲のようだった。だが、僕は恵理香を女としてみたことなど少しもなかった。中学生時分から、僕はモテてモテて仕方がなかった。そのため、恵理香の他にも可愛い女の子が僕に好意を寄せていたからだ。だから、恵理香は一番の親友としてしか考えていなかった。

だから高校受験が終わり、僕が志望校全部と二次募集全部に落ちたとき、恵理香が合格していようといまいと関係ないような気がした。他にも彼女候補はたくさんいる。そのぐらいの気持ちだったからだ。恵理香との縁が切れるだけだと思っていた。そして、恵理香もそう思っていたらしく、中学の卒業式ではあっさりと別れの挨拶をした。

「今日までありがとう」

「いえいえ。こちらこそ、楽しかったよ。安藤は板前さんになるんだよね? 私は頑張って高校を卒業したら、お医者様になれるように大学に行くから。もし、お医者さんが必要だったら、私に言ってね」

「おお。お互いにガンバロウな」

僕と恵理香は互いに手を差し出し合った。そして、力強く握り合った。固い友情を確認するように、僕らはその手を握り合ったのだ。そんな別れのはずだった。

中学を卒業してから、知り合いの料理店での厳しい修行生活が始まった。毎日毎日朝から晩まで働く日々が続いていた。その結果、僕が思ったとおりに、恵理香とはほとんど会わなくなった。たまに道で見かける程度だった。

修行生活に慣れてきて、時間に余裕が出てきても、僕は一向に恵理香と会おうとはしなかった。恵理香といるのなら、自分の彼女と一緒にいた方が楽しかったからだ。それに、たぶん恵理香にも彼氏ができていたのだろう。恵理香が男と腕を組んで歩いているところを見かけたこともあった。そんな様子を見て、微笑ましく思ったこともあった。

だが、そんな関係も恵理香が大学に入る頃に変化が現れた。僕が料理業界のトップと称される天下屋に勤めるようになってからだ。恵理香は僕に頻繁に会いに来るようになった。恵理香の親が離婚しそうになっていたのだ。家庭の事情を相談できる相手がいなかったのだろう。僕は何度も恵理香の泣きそうな顔を見た。

「どうしよう? 別れたら、やっぱり大学なんか行かないで働くべきだよね」

恵理香は僕の目を見ずに話していた。