TAG

大学生

青春小説「大学入門す」END

青春小説「大学入門す」END 「手術は成功です。眠っていますが、少し経てば話すこともできるでしょう」 皆の顔に生気がよみがえった。座ったままの佐々木の父親らしい人は揺すっていた体をビクンと波打たせた。  佐々木のケガはさほど激しいものではなかった。病院に運ばれてきたときは、重体、最悪ならば、それ以上のこともありそうだっのだが、佐々木の魔物のような得体の知れない回復力が佐々木自身を救ったのだ。 僕は […]

青春小説「大学入門す」11

青春小説「大学入門す」11  渋谷のモヤイ像の前で、今坂さんと僕は米原と佐々木の来るのを待っていた。約束の時間から、すでに三十分。二人とも来る様子さえなかった。日が沈みかけていて、僕らの影が段々と見えなくなってきていた。 「ねえ、電話してみようか。あまりにも遅いもんね」 そう言いながら、今坂さんは麦編みの手提げ鞄からピンク色の携帯電話を出した。 「もしもし、梢チャン。私、今坂ですけど」 携帯電話の […]

青春小説「大学入門す」10

青春小説「大学入門す」10  次の日の昼時、僕は今坂さんを捜しに学食の方に向かった。梅雨の晴れ間で、蒸し暑い。少し歩くだけで、体中から汗が噴き出してくる。面倒くさくなりながらも、僕は学食へと急いだ。 すると、偶然にも学食から米原と今坂さんが出てきた。 「おおい、探したんだよー」 僕は手を振りながら、二人に近づいた。二人も容易に気づいてくれて、こちらに手を振ってくれた。 「私たちも探していたのよ。近 […]

青春小説「大学入門す」9

青春小説「大学入門す」9  しとしとと降る雨。かすかに肌を刺激する風も、雨のいやらしい匂いしか伝えない。僕は鼻につくその匂いを気にしながら、無言で今坂さんの話を聞くしか方法がなかった。これでは今坂さん一人がベンチに座っているのと変わりがない。 灰がくすんだ空のもと、僕と佐々木は夜の大学を散歩していた。夕方まで降っていた雨もさすがに降り続けるということが辛かったらしく、夜になってやんでしまった。昼間 […]

青春小説「大学入門す」8

青春小説「大学入門す」8  太陽が完全に落ちたというのに、ネオンのおかげで新宿は明るかった。僕と祐子はみんなと別れた後も、代々木、渋谷方面に向かって新宿を歩いていた。かなり飲んだらしい祐子は、歩くスピードが速かったり、遅かったりと不定期だった。でくの坊な電信柱にぶつかりそうになったことも度々だった。 「ねえ、ユージ。彼ら、すごくいい人だったね。私は心配してたんだよ。また、友達がいないとか言って、ブ […]

青春小説「大学入門す」7

青春小説「大学入門す」7  新宿のアルタ前で待ち合わせをして、待ち合わせの相手を見つけるのは難しい。だが、適当な待ち合わせ場所がなかったので、僕はいつもアルタ前で待ち合わせをすることにしている。人の声を消そうとするような音を出している大画面の下、僕は祐子を捜していた。人混みのせいで、なかなか見つからない。こりゃあ、電話するしかない。そう思って、アルタ前の人混みを離れようとしたとき、僕は祐子を見つけ […]

青春小説「大学入門す」6

青春小説「大学入門す」6  結局、僕も佐々木も、そして米原さんも今坂さんさえも。誰も、みんなが知り合いになったサークルには入らなかった。だが、僕らはあれ以来、よく昼御飯を四人で取るようになった。クラスが同じわけでもない四人だった。けれども、受けている授業がほとんど同じために顔を合わす機会が多いのだ。それに僕としては、彼女たちといることが不愉快ではなかった。彼女たちはグラビアガールがどうこうとか言う […]

青春小説「大学入門す」5

青春小説「大学入門す」5  新歓コンパは騒がしかった。サークルの説明などほとんどなく、普通の飲み会と何も変わらない。畳の上にデンと足を据えた四つ足テーブルの隅っこに、初め僕と佐々木はおとなしく飲んでいたのだが、佐々木は酒が進むにつれ、エンジンがかかったように席を移動し始めた。それも決まってかわいい女の子がいるところに。僕はそんな様子の佐々木に呆気にとられながら、水のように透明なレモンサワーを飲んで […]