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オンライン青春小説「国道302号線を歩く」end

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」end 何本も大きな通りが横たわっている。その先に建物がある。僕の前を横切る車のヘッドライト。闇の中で、その光がれんが造りの大きな建物をくっきりと浮き彫りにしてくれる。明るい、巨大なその建物。その建物の中へ、誰も彼もが吸い込まれるように入っていく。ここが東京駅だ。みんなの出発と終着の駅、東京駅だ。僕にとっても、この東京駅が新宿からの遊歩行の終着駅だ。ここか […]

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」9

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」9 そう。僕はあの時答えを見つけた気になっていたが、それは見つけた気になっていただけだったのだ。答えなんぞ見つけていなかったのだ。 五階建ての大きな書店である三省堂を右手に曲がった。いつも行くジョナサンが見えてくる。赤と白のラインが並んだ屋根のジョナサンがどんどん近づいてくる。いつもなら、ここに仲間がいる。止めどなくおしゃべりをしたり、軽く食事をしている。 […]

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」8

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」8 そういえば。僕は再びPHSを取り出した。知佳からメールがあったのに、気づかなかったかも知れない。急に、そんな思いに駆られたからだ。だが、着信はなかった。電話の着信に過敏になっている僕が気づかないはずはないのだ。そのまま、知佳からもらったメールをもう一度見直し始める。 さっきは何も思わなかった、知佳からのメール。それが、今度はスッと知佳の言葉が頭の中へと […]

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」7

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」7 石畳の名もなき橋を渡った。市ヶ谷にある自衛隊駐屯地の白い塔を見上げた。僕は靖国通りを歩き続ける。タバコに火をつけ、何度もその火をもみ消し。何かを考え、考えついた何かを忘れ去り。立ち止まって靴の紐を結び直したり、右手から左手へ鞄を持ち替えたり。 歩いている間にも、容赦なく時間は流れていく。その時間が流れている間、ずっと僕は無口だった。開くことがないように […]

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」6

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」6 エレベーターを下りると、新宿の灯が目に飛び込んできた。もう外は暗くなっていたのだ。夏とはいえ、八時近いとさすがに店に明かりがつく。ピンク色の看板型ネオンに、豆電球型の白色灯。オレンジ色の文字が走る電子掲示板もはっきり見える。ワシントンホテルの通りを、僕はとりあえず靖国通りに向かって歩き出した。呼び込みの中年やネクタイをゆるめたサラリーマンを避けつつ、僕 […]

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」5

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」5 しかし、飲み会の場で冴えない顔をしているのも悪いだろう。場の雰囲気を崩す。そう思い直して、自分に寂しくない、楽しいんだと言い聞かせた。そして、何もかもを飲み込むように、ビールを一気にあおった。のどを通り、胃に行き着いた瞬間に、僕は久しぶりにビールの苦さを感じたような気がした。瓶を取ると、僕は空になった自分のコップに投げやりにビールを流した。そして、続け […]

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」4

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」4 座敷を見渡した結果、奥の方で空いている席を見つけた。四つある卓の中で、壁側の上座がぽっかり空いている。僕は上座に座ることにした。特に礼を払う人もいないので、自分がそこに座っても何の問題もないからだ。荷物を自分の体の左側に置いて、どっかりとあぐらを組む。すると、目の前に二人の後輩が並んでやってきた。そのどちらも何度か見た顔だが、あまり話したことがない。一 […]

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」3

オンライン青春小説「国道302号線を歩く」3  <イマドコニイル? ヒデ> メールを打ってから、十五分が経った。しかし、何の返事もない。しかも、こっちはこっちで遅刻組が姿を現す気配さえない。みんな、陰りつつある太陽の中で待ちぼうけだ。斉藤さんは下を向いて、うんざりという様子。口を開くことさえない。対照的に黒木と後輩たちがはつらつとして、童話『アリとキリギリス』のアリのように休むことなく口を動かして […]